ケアプランの作成
在宅で介護保険サービスを利用する場合に、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらうのと同じように、施設入居後もケアプランが作られます。介護保険施設、特定施設では施設サービス計画書と呼びます。
介護型の施設であれば、施設に所属するケアマネが、住宅型であれば、在宅と同じように居宅介護支援事業所のケアマネが作成します。入居者に直接会ってアセスメントを行います。身体機能、精神状態、認知症の有無、病気などの情報取集し、介助が必要かを検討してケアプランに反映させます。
看取りまで行う施設は、医師による診断がされると看取り指針に従いターミナルケアプラン(看取り介護計画書)が作成されます。
認知症は、脳が病変を起こすことが原因です。知的機能低下、自立した生活が困難になる病気です。この知的機能低下が中核症状です。具体的な症状は、記憶力低下、失語、実行機能低下、理解力低下で認知症の発症により、すべての人におこる症状です。行動、心理症状は、中核症状に不安感、身体不調、ストレスが重なった場合に起こってくる症状です。具体的な症状は、徘徊、暴言、幻覚です。中核症状の進行を介護の力で軽減は出来ませんが、利用者に心理的負担を与えず介護することで、行動、心理状の出現は抑えられます。
認知症の高齢者が、記憶の欠落のため勘違いします。物が見つからないことは、日常でもよくあることですが、認知症の高齢者は、自分で保管した場所などの経験記憶自体が完全に無いので、見つからないと盗まれたと思うようになります。そこから、被害妄想に発展していきます。泥棒扱いされる人が、認知症の人を介護する身近な人であることが多く、トラブルになることが多々あります。
理解できないということは、不安になります。認知症の高齢者は、どうしたらいいのか判断できずに不安になります。また、認知症の高齢者は、断片的に記憶が欠如するために時間の流れがつかみにくくなります。自分の行動にも前後のつながりがみえにくくなり、なぜここにいるのかという不安な気持ちを持ちながら生活します。認知症の高齢者は、思い出すことは困難でイライラした気持ちがストレスとなり生活しています。便秘、食欲不振、発熱、持病の再発などの身体不調が原因で不眠症などを引き起こします。認知症が進むと、自分の周囲を判断出来なくなります。この判断力の低下が認知症の高齢者の混乱原因となります。認知症は、見当識、判断力、実行機能障害が起こるために直前のことも忘れ、時間、場所もわからなくなります。認知症が進行すると物事を論理的に考えたり出来なくなります。
日常生活の買い物、料理、掃除、洗濯もわからなくなることもあります。
認知症高齢者に対して、適切な環境と適切なケアが提供されている時は、高齢者の認知症が改善したようにみえます。認知症高齢者から、暴言、暴力がなくなり、穏やかな日常生活が送れるようになります。しかし、中核症状である知的機能低下が改善されたわけではありません。適切な環境とケアによって、認知症高齢者の心理的ストレスが軽減し、行動・心理症状が出現していないということなのです
行動・心理症状を客観的に捉え、高齢者の訴えに対して向き合い対応することで、落ち着いた生活が出来るようになります。現在の医学で中核症状の進行や抑制を改善することは不可能です。
環境により認知症高齢者の人は、行動・心理症状を誘発することがあります。在宅生活の認知症高齢者が、施設に入所すると、入所後暫くは徘徊が頻繁になります。また、暴言や暴力行為が増加することもあります。これは、なじみない環境の不安によるためだと考えられてます。ケアをする介護者の心理状態も、高齢者の心理に影響を与えます。高齢者の介護者が不快感を持っていると認知症があっても感情はあるので、行動・心理症状を誘発します。
行動・心理症状への対応として、認知症高齢者の状態を把握して、個々に適切な対応をすることは、必要です。介護者が穏やかな気持ちで受け止めてケアを提供することが大切です。介護者のストレスを軽減するような介護者の心のケアも必要です。
認知症ケアの先駆者である室伏君士は、認知症の人の特性に合わせたケア、すなわちその老人の心向き(態度)を知り、それに沿って、その老人の生き方を援助していくのがケアであると提唱しています。トムーキットウッドはパーソンセンタードケア(PCC: person centerd care)</strong>を提唱しました。これは、その人らしさを中心におくケアを実践することが、人の尊厳を支えるケアにつがっていくというものです。認知症ケアはまさに人中心のケアであり、生活する個人を対象にしたケアです。病気であっても人と生活に焦点を当てたケアが必要だと述べています。介護者の都合のケアでなく、本人中心のケアです。
長谷川式簡易知能評価スケールの開発者である長谷川和夫は、パーソンセンタードケアの考え方を受けて、高齢者の持つ物語を尊重し、内的体験を聴き、生活歴を聴き取り、その人らしさを大切にしてあげることと述べています。認知症高齢者は、不安を抱いていることが多く、介護者はこの不安を取り除いてあげるケアを心がけることが大切です。また、長谷川和夫はなぐさめ(安定性)愛着(絆)帰属意識(仲間に入りたい)たずさわること(役割意識)その人らしさ(物語性)の5つのニーズを満たすことが重要です。一番ケ瀬康子は、認知症ケアを援助を必要としている人への生活面での世話つまり生活ケアであると述べています。
認知症ケア理念は、尊厳の保持、その人らしさ、認知症の人を中心とした生活といえます。また、家族が自らの力で問題解決できるよう側面的な支援すること、家族の問題解決能力を高めることというエンパワメントの理念も加えることができます。認知症の人の尊厳保持と認知症の人中心生活の継続を支援していくことが求められます。記憶障害が進行したとしても、感情やプライドは残っています。不適切な対応は、プライドが傷つき怒りが生まれます。安定した生活をすることができません。日常生活の支援は、ひとりひとりの生活に着目して認知症高齢者の人に残された能力を大切にすることが重要です。
アドボケイトの宣言とは、介護者は利用者(認知症高齢者やその家族)の知る権利、自己決定権、プライバシーが保護される権利、人格が保障される権利、財産を守る権利を保障し擁護することを宣言したものです。介護者は個人情報は口外せず(守秘義務)、あなたの権利は守ります(権利擁護)と口頭お文書で示します。人は誰でも、自分のプライベートな生活空間に他人が入ってくることに対して、抵抗感、負担感を持つものです。介護サービスを提供する目的の専門職と利用者との関係でも同じことです。家の実情が外部に漏れるのではないか、今までの生活リズムが崩れるという不安が生まれることもあり、そこで、アドボケイト宣言をして、介護者の立場を明確にすることで、利用者に安心と信頼を保証します。
ケア提供の前に、どのような援助行為も利用者にわかりやすい言葉で説明し、本人から同意を得ることです。本人からからの同意が不可能であり、やむを得ない場合は、家族や後見人の同意を得ます。説明内容で重要なのは、ケアの有用性に加えて、ケアに伴うリスクも伝えておくことです。ケア終了後に、こんなはずでなかったという声を減らすと同時に介護者への信頼感や安心感を得ることにつながります。認知症高齢者の認知機能、行動、日常生活動作の客観的評価から、できることとできないことが明らかにします。自らの力でこれまでと変わらない生活が安心して送れるように支援します。支援にあたり適切な介護計画を実践して評価します。分析した情報から本人の視点に立ち、人格を尊重してその人らしさを支援していきます。自立支援には、認知症の人も私たちと変わらない事を理解し、言葉を選んで働きかけることが重要です。このことを踏まえて、介護計画の立案、実践が求められます。行動・心理症状発生の要因を検討し、認知症の人の不安を和らげるような環境作りをし、対応方法を実践します。薬物療法が効果的に行われるように医療従事者との連携も密にします。行動・心理症状の現れ方は、個人差あります。すべての症状が認知症の人に現れるわけではありません。適切な対応で落ち着く人もいれば、適切な対応でも納得のいかない人もいます。行動・心理症状の第一対応は、非薬物療法ですが、場合により薬物療法が適用されます。また、両方併用することもあります。行動・心理症状の原因を知ることがとても重要です。
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